褒める文化と褒められるための努力

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 昨日読んだ本の中で、こんな一節がありました。


「子どもは無意識のうちに人と自分を比べて自信を無くしている」


 では、大人は自分と他人とを比べて自信を無くすことがないのか。いや、結構多くの人が「ある」と答えるのではないでしょうか。自信を持てない。このことで多くの人が落ち込み、自己嫌悪になり、ストレスを抱えている、日本ではこれが大人の世界でも日常的になっている気がします。


 では、どうすれば自信を持つことができるのでしょうか?そう聞かれれば、例えば、それを裏付けることができるような努力をするだとか、他人から褒めてもらうだとか、そんな答えがパッと浮かんできます。アスリートなんかは前者のような答えをいう人が多いですが、“練習は嘘をつかない”、“不安を無くすためにやるべきことをする”などというのが、その思想にはあるのだと思います。


 一方、後者の他人から褒めてもらうということ。これなんかは、正に子どもに対しては必要なことで、親や先生が子どもを褒めてあげるというのは、とても大切なことだと思います。


 例えば、Aくんという子どもが陸上の長距離をやっていたとします。Aくんは、“他の子どもと比べれば”、チーム内でもビリの方です。でも、ある時、練習中のタイムトライアルでAくんは自己ベストを5秒更新できた。もちろん、それでも他の子どもたちよりは遅くて、後ろから2番目のゴールでしたが、Aくんにとっては自己ベスト。そこで監督が、「おお、Aくん、自己ベストやったじゃないか!一気に5秒も更新できたぞ!」などと褒めてくれたらどうでしょうか?


 普段はたいしたことがない選手だったので、自分なんて気にも掛けられていないだろう。皆と比べたら遅いし、自分には才能がないのかな。陸上辞めようかな。Aくんは、そんなことを考えていたかもしれません。しかし、監督にたった一言、お褒めの言葉を貰う。それだけで、Aくんはどれだけ救われ、どれだけ自信を持つことができるでしょうか。こんな自分をちゃんと見てくれてる人が居たんだ、その事実を知ることで、Aくんは何倍もモチベーションが上がると思うのです。


 これは社会人でもそうですよね。上司が部下をどれだけ気に掛けて、時には叱責し、時には褒めてあげて、力と自信をつけさせるか。それにより、その部下の実力もモチベーションも高まりますし、組織のパフォーマンスも向上する。一人ひとりが自信を持って、イキイキと働く組織は、本当に輝いているものです。


 日本人は褒めるのが下手とよく言われます。そして、褒められても必ず謙遜します。お世辞じゃないのかと疑います。そのくせ、自分の自信やモチベーションをコントロールできているのかというと、そうでない大人も結構多い。特に、20代の僕と同世代の人なんかは本当に多いのではないかと思います。


 そこには、褒めるという文化の欠如と褒められ慣れていないということ。それに加えて、僕と同世代の人なんかは、自分でほとんど何の努力もしていないくせに、努力している同世代の成長した人々と比べて、自分はダメだと自信を無くすということ。この2つがあると思います。


 大人にもなって、何の努力もせずに自信を無くしている、そんなのはそうなって当然ですよね。ですから、他人と比べる必要は無いけれども、自分で努力することは必要。そして、その努力は必ず見てくれている人がいるし、努力はすればするほど自信がつく。さらに、それを誰かに褒められれば、さらに自信がつく。そうやって、自信は作られていくのではないでしょうか。


 とはいえ、子どもはなかなかそんなことはできないので、どんなに小さなことでも、進歩が見られたら大人が褒めてあげましょう。これは、大人に対してもそうですが、大人は大人でしっかり考えて、努力とセルフコントロールもしましょう。そうして、日本も褒める褒められるという文化が生まれて、みんな自信を持ってイキイキとしている世の中になると良いですね。


 昨日、そんなことを思いました。


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