トヨタというリーディングカンパニーに期待されるCRMの未来

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 今日の日経朝刊に、『トヨタが全販社で顧客管理システムを刷新』なんていう記事が載ってたけど、こういう動きは今後いろんな会社で広がっていくんだろうな。しかも、トヨタがやるならということでの注目度も案外大きのではないかと思う。


 ちなみに、こんな関連記事。
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 トヨタなんて言ったら、言わずと知れたグローバルカンパニーであり、すでにグローバルに大きく展開しているわけだけど、だからといって、国内を大事にしないはずはない。


 日本は超少子高齢化、そして人口減少、加えて成熟化と、何もしなければ黙ってパイは減っていく。それ故、国内需要に拡大は見込めないということで、海外へ販路を求めて出て行く企業は多いわけだけど、いくら国内需要が見込めないとはいえ、国内を捨てるという企業は少ない。


 そして、新興国へ出て行くと言ったって、新興国も今は発展途上でも、いずれは国内と同様の状況になるし、同じことを考えている外国企業との競争も熾烈だ。


 じゃあ、さらに発展途上の国へと行くという考えもあるが、そんなことをしていては同じことの繰り返しで、ハッキリ言って脳が無い。製造拠点を日本から中国へ、中国からマレーシアへ、マレーシアからバングラデシュへと、人件費が安い国へ安い国へと移動させるのと同じなのだ。


 そして、そもそも国内需要に拡大は見込めないと言うけど、企業は国内の需要を拡大するための動きをしているのだろうか?需要は操作できないと思い過ぎてるんじゃないだろうか。


 ここでは、政府や日銀の果たす役割が大きいと思われているフシがあるし、そういう考えを論じる経済学者も経営者も多いんだけど、結局今のように経済状態が良くない時に政府や日銀が行う策は、今のこの時を乗り切るためのものであって、これから先の未来を保証するものではないと思う。


 しかも、企業がそこで何も変わらずに、政府や日銀の策によって、業績を回復させていたのでは、また経済危機に陥入れば、確実に同じことの繰り返しになる。それは、これまでの歴史を見れば明らかだ。


 だからこそ、需要を創造するとか、顧客を創造するとか、既存顧客を大事にするとか、そういう考えがここ最近にわかに各企業に湧いてきているわけで、今回のトヨタの件も発端はそういうところにあるんだと思う。


 そして、注目の顧客管理システムだが、これまで日本はSFAにしろCRMにしろ、失敗の道を辿ってきた。ここではそのことは詳しくは述べないが、簡単に言えば、そもそも間違った理解をされたまま浸透したが故の失敗である。


 システムを作るSIerも、コンサルタントも、経営者も皆が誤った理解をしていた。そして、彼らのほとんどは未だに間違っているし、本質を理解していない。本質を理解しているのは、残念ながら本当にごくわずかな人たちだ。


 今回のトヨタの新システムの詳細はまだ分からないんだけど、ただ単にこれまでバラバラに使っていたシステムを統合して、一気通貫な体制をとりますというのでは、確実に失敗する。


 既存顧客を維持する、需要を創造するというのであれば、そのためのシステムが必要だし、そのシステムの前に、そのための理論が必要なのだ。そして、システムはその理論が搭載されているものである必要がある。


 これまでのCRMシステムには、そんなことを実現できるものは、ごく一部を除いては無い。つまり、やりたいことをするための理論が載っかっていないシステムだったのであり、失敗するのは当然の結末だったということだ。


 どういう理論があり、それを実現するために、どんなシナリオやアクションがあるのか。そこが明確に示され、システムに搭載されなければ、トヨタがやろうとしていることはできないだろう。


 しかし、その部分がしっかりと網羅されていれば、これまでのCRMの失敗を覆すような大きな成果が出るのは確実で、他社に大きな差をつけることにもなるはずだ。


 それは当然で、顧客と関係を深化させ、LTVを最大化するという、CRMの本来の成果が実現できるということは、変な競争などしなくとも、顧客は自社に靡いてくれるということである。


 本来の目的を達するシステム、その前にそのための理論がトヨタにあるのか無いのか、これから次第に分かってくるし、注目してみていきたいと思う。そして、もしトヨタがこれで成功すれば、日本の他の企業も確実に追随する。


 日本企業の経営者の中には、これまでのやり方ではまずい、次世代の経営のポイントは顧客との関係深化だと、気付いている人もいる。しかし、その具体論が社内外に無いのが実情だ。


 一部のコンサルティング会社は、そのための具体論を持ち、どんどん成果を上げているが、そうした理論や方法論を世に広く浸透させていくためには、トヨタのような企業で成功するかどうかにかかる部分も大きい。


 そういう意味でもトヨタには期待もしているし、今度は日本全体が、正しい顧客戦略、正しいCRMSFAを理解し、実行してほしいものである。そうなったときに、国内需要縮小へ待ったをかけることができるかもしれないし、グローバルな競争でも優位に立てていく可能性は大きい。


本質を見抜く目が、ますます問われている。


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